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大阪高等裁判所 昭和26年(う)448号 判決 1952年3月07日

控訴人 被告人 岡本義雄

弁護人 河合悌介

検察官 友沢保関与

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金一万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

弁護人河合悌介の控訴趣意は記録に綴つてある控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用する。

論旨第二について、

しかし適法に取調べられた証拠である以上は裁判所が事実を認定するについてそのいずれを採りいずれを採らないかは裁判官の自由な心証によつて決すべき事項であるから原審が所論援用に係る証人池田幾次郎同木村賢一の証言を採用しなかつたからとて訴訟手続上採証の法則に違背したものということはできない論旨は理由がない。

次に刑事訴訟法第三九二条第二項により職権で原判決の法令適用の当否を調査するに原判決の認定する事実は被告人が古物商であつて古物営業法第三条による市場主の許可を受けない者であるに拘らず奈良市樽井町七番地で昭和二四年一〇月八日から同二五年一月二六日までの間毎月八、一六、二六日の三回宛計一二回に亘つて古道具の売買交換若くはその斡旋を業として古物市場を設けていたというのであるがかような古物営業法第二七条によつて処罰せらるべき同法第六条違反の罪即ち市場主でない者が市場を設ける行為は一種の営業犯であるから同一の場所で継続的に行われる限り事実上の市場開設が相当の回数に及ぶ場合であつても法律上はなお一個の犯罪と見るべきである。そして原判決の認定した被告人の本件犯罪は前叙のとおり同一の場所で継続的に行われていることが明らかであるから事実上の市場開設が合計十二回に及んでいるとしても法律上一個の犯罪を構成するに過ぎないものといわねばならない。然るに原審はこれを同種犯罪の併発として刑法併合罪に関する規定を適用しているのであるからこの点に於て法令の適用を誤つたものというべく該法令適用の誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決は破棄を免れない。

よつて刑事訴訟法第三九七条第三八〇条に則り原判決を破棄しなお本件は当裁判所において直ちに判決するに適する場合であるから同法第四〇〇条但書により更に判決をすることとし原判決の認定した事実に法律を適用すると被告人の原判示の所為は古物営業法第三条第六条第二七条に該当するので所定刑中罰金刑を選択しその罰金額の範囲内で被告人を罰金一万円に処し右罰金を完納することができないときは刑法第一八条に則り金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきものとし主文のとおり判決する。

(裁判長判事 富田仲次郎 判事 棚木靭雄 判事 入江菊之助)

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